過去は変えられなくて、先のことは何も見えない。
だから人は立ち止まってしまう。
過去に何か後悔があれば、同じ過ちを繰り返してしまう恐怖に怯える。
何も知らない、無邪気なのは、世間を、世界を知らないから。
失敗を恐れていないのは、失敗したことがないから。
世界を知れば、人は純粋さを失う。
失敗を知れば、人はその怖さを覚える。
ずっと無邪気な子どものままではいられない。
蒼だって、この世界がどんなところか、身を持って知っているはずだ。
それなのに、あんなに綺麗に笑う。
無邪気といえば、千来だってそうだ。
この世界の汚い部分を知らない、無邪気な子ども。
その無邪気さを失う世界に、自ら入った。
そんなことは何も知らずに。
…できることなら、綺麗な笑顔のまま、そのままでいてほしい。
あの女の子だって。
いずれは、みんな世界の汚れたものを見ていく。
変わっていくだろう、純粋さを失っていくだろう。
それでも、俺は願う。
どうか、変わらないで。
どうか、失わないで。
大切なものは、いつだって、そばにあってほしいのだから。
俺は、大切なものは、いつだって……