夏休みの魔法


教え始めて数十分。


「…ここ、基礎なんだけど」

「分かりません…」


蒼の理解力のなさには、呆れた。


俺だって頭いいほうじゃないけど…ここまでとは…。


「だから~、sinθの加法定理に当てはめればいいんだよ」

「カホウテイリ…?」


「あーもう!教科書読めよ!お前、今までどうしてたんだよ!?」


不思議になって聞いた。


「今までは…幼なじみとその兄ちゃんに聞いてた」

「だったらその人たちに聞きゃいいだろ!」


すると蒼は、机に突っ伏したまま、


「ムリ~」

と力なく答えた。


「…なんで」

「なんでも」

「……幼なじみに、恋でもしたの」

「ばっ…!!」


思いっきりあげた顔は真っ赤だった。

え、冗談だったんだけど。


「へー、好きなんだ。バレないように頑張れよ?」


「好きじゃねぇよ!あいつは幼なじみだし、友達だし…」


「そこから恋に発展とかさ」


ドラマ的展開ってやつ?


ありえなくもないと思うなー。