探して、探して。
やっと見つけた千来はスマホを耳に当てていた。
…電話中か…。
待っていると、笑顔だった千来の顔が豹変した。
怒っているような、厳しい、それでいて悲しそうな顔。
何を話しているかは分からない。
けど、ついさっき、見せたような顔だと思った。
しばらく待ったけど、ちょっとだけ近づくことにした。
「せ…」
「北斗くん?」
こっちは向いていないのに名前を呼ばれ、ビクッとした。
バレてる…?
そんなことはなくて、千来は相変わらず電話の相手と話している。
何を話しているんだろう、相手は誰だろう。
…千来が、俺の話をする相手、あんなにも表情が変わる相手。
どうしてか分からないけど、知りたいと思った。
千来が、あんなに優しい顔で、嬉しそうに話す相手を。