ー北斗sideー
千来に言いたかったことは、俺の勝手な八つ当たりで言えずに終わってしまった。
あんなことが言いたかったんじゃない。
千来を傷つけたかったわけじゃない。
分かってほしかっただけだった。
自分を殺すこともしなければ、芸能界で生きていけないということを。
「……なんで…」
「北斗?」
思わず呟いた俺を、夕哉は不思議そうに見る。
「なんであいつ、こんなとこ入ったんだよ…」
素直で、優しくて、自分よりも相手のことを考える。
そして、嘘をつけない。
「…純粋無垢なあいつが、こんな世界で…耐えられるはずがない…」
穢れてしまう。
下手をすれば、耐えられずに壊れてしまう。
そんなに脆いとは思っていないけど…怖い。
千来が純粋でなくなってしまうのが、どうしてか、怖い。