「…あのね、蒼」
「うん?」
「あたしはね、芸能人じゃなくたって、かっこよくなくたって…一緒にいてくれればよかったんだ」
思っていることを、すべて蒼に吐き出す。
「…家族を気にしてくれてるって、思いたかった。だけど熱愛報道みたら、泣いてるお母さんみたら…無理だって、思っちゃった」
本当に大切にしてくれてるの?
お母さんを、あたしたちを愛してくれてるの?
一緒にいたいと、思ってくれてるの?
「お父さんも、芸能界も、何もかも分からなくて。気づいたら恨んでた。憎んでた。お母さんを、あたしたちを傷つけるお父さんを」
大嫌いだって、思ってた。
少しくらい会ってほしいのに、誕生日を祝ってほしいのに、それすらも叶わない。
「でもね、あたしにとってお父さんはお父さんだけなんだって思ったら…つらくなった」
どうしてかは分からない。
ただつらくて、悲しくて。
「…そのつらさも、恨みにすり替えた」
悪いのはお父さんだ。
帰って来ない、悲しませるお父さんが悪いんだ。
「お父さんのこと、何も分かろうとしなかった」

