夏休みの魔法


帰り道、隣には蒼がいた。


「…………………」


お互い、何も話さない。


昔からの付き合いだし、気まずくはないけどなんで蒼がいるのか分からなかった。



「……あの」

聞こうと思って、口を開いたときだった。



「あのっ、COLORFULの高槻蒼くんですか!?」




女の子二人組が、頬を赤く染めて蒼の前に来た。


「そうですけど…」


「ファンなんです、握手してください!!」



…ああ、そうか。


蒼はCOLORFULだ…。


「いいよ、応援ありがとう」

にこっと笑って、蒼は女の子と握手した。


二人はキャーキャーいって、嬉しそうに去っていった。



「…眼中になくてよかった…」


思わずそう呟くと、蒼はなんで、という顔をした。


「いろいろと面倒だからですよ」

メディア露出禁止だし、蒼と一緒にいるとか何者?って思われるだろうし。


「…別に、タメでいいのに」


「……そんな不満そうにしないで、こっちだってやりたくてやってるわけじゃないし」


「分かってるよ。…でもさ、幼なじみに敬語遣われるの、嫌だな」


…あたしのほうが嫌だよ!


「で、どこまでついて来るの」


「お前の家。…たまには話そうぜ」






…不器用だなあ、蒼は。


お父さんと会ったこと、気にしてんならそう言えばいいのに。





優しさが、不器用だ。