それから、楽屋に戻ってみんなに謝った。
「千来、確かに好きじゃない人もいるかもしれない。でもそれを面に出したらダメだ。嘘つくことも覚えないといけない」
夕哉くんに、そう言われる。
「………はい」
嫌だ、ウソはつきたくない。
感情を、殺したくない。
「…千来、どうしてもその人が嫌いなら、その人を好きな人だと思えばいい。…なんなら、憧れの北斗だと思えばいい。どんな手段でもいい、辛いけど…そうしないと生きていけない」
…分かってる。
これが芸能界なんだ、分かってたはずだ。
それなのに…苦しい…。
「……一番いいのはね、嫌いな人を少しずつ好きになることだよ。その人のいいところを見つけるんだ」
そうしたら、きっと嫌いだとは思えなくなるから。
夕哉くんは、少し悲しそうに笑った。
…それならば、好きになれるのだろうか。
お母さんを泣かせる、あの人を。

