…さて、本当に楽屋に戻ろう。
歩き出そうとしたら。
「千来」
後ろから、声がした。
振り返ると…柱の陰から北斗くんが出てきた。
「北斗くん!?」
びっくりした…いきなり出てくるなんて。
一体どういう顔したらいいの…?
「…さっきは、ごめんな。厳しく言い過ぎた」
迷っていたら、切なそうな顔で謝られた。
「…っ、北斗くんが悪いんじゃないです!僕がワガママだったから…」
「いや、勝手に決めつけて感情的になって怒ったのは俺だ。理由も聞かずに…ほんとごめん」
…北斗くんが、悪いんじゃない。
「…北斗くん」
「ん?」
「……僕、たぶんこれからも、木崎さんのこと好きになれないです。…ごめんなさい…」
「理由は、あるのか?」
「…………………」
理由なら、ある。
だけどそんな理由は言えない。
「…言えないならいい。お前にもいろいろあるんだろ」
何も言えなくて俯いていると、頭をポンポンっとされた。

