夏休みの魔法



しばらく無言で、どちらも話そうとしなかった。





「…もう、切るよ?」


時間的にマズいと思ったあたしは、そう切り出した。


『………優来。無理、するなよ。如月北斗のことだってあるんだから』


「北斗くん?なんで?」


なぜそこに北斗くんが出てくるの?



『お前、一度会ってるんだろう?』


今度は、あたしが息をのむ番だった。



まさか、バレてたなんて。


「…知ってたんだ?」


だから、あたしが一番のファンだって言っても信じてくれてたんだ…。



『一応、な。…ファンとしてか、恋愛としてか…。どっちでもいいけど、好きなら後悔するなよ』



たぶん、恋愛としてではないと思う。

思いたい。





「うん、大丈夫。…好きだから」



北斗くんのことは、大好きだから。

それだけは胸張って言えるから。



「安心して」







それで話は終わって、あたしは電話を切った。















まさか、さっきの会話を聞かれているなんて、思いもしていなかった。