すきなひと



啓のお母さんが、家を出て行ったのだ。


それはまだ、私たちが小学二年生の時の話だ。


私は啓のお母さんとも仲良くなっていたからショックだった。

それ以上に啓は、悲しんだ。


「けい……」

私は何もできなかった。ただ、ただ、啓の隣に無言でいることしかできなかった。


──お母さん!どこいくの!お母さん!

──ごめんね、お母さん疲れちゃったの。

──お母さん!おいていかないで!ねえ!お母さん!!


私も、啓と一緒に泣くことしかできなかった。