里緒菜の診察を終え、立ち上がった医者に有沢はコートを差し出す。 「ああ…悪いね、千景くん」 「いえ」 この人は古くから黒凪が世話になっている 世界でも有名な凄腕の医者だ。 白衣の右側のプレートには、黒い文字で「安藤」と描かれている。 海薙たちはまだ黒凪に来て日が浅いから、当然安藤さんのことは知らない。 オレにしてみれば幼いころからの顔見知りだが、こいつらは今日が初めての対面となる。 「…新入りかね?」 黒いコートを白衣の上から羽織りながら、安藤さんが海薙たちへと視線を向ける。