私は梅の花なんかじゃない。
梅の花はきっと岡田だよ………。
私はそっと簪を握り締めると涙を拭いた。
泣いていたってなにも出来ない。
なにも変わらない。
ただ立ち止まっているだけ。
岡田は私のだいぶ前を進んで進んで散っていってしまった。
早い早いうちに散ってしまったんだ。
私がこの動乱の時代の中でも前に進めるように強い香を残して。
「ありがとね岡田。あと………
さよなら。」
私が彼に別れを告げた日は、春の終わりをつげるような日だった。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…