夢を見る。とても懐かしい、優しい夢の世界。

ドイツへ行ってしまう前の最後の花火大会の日。

誕生日のお祝いに尋は自分の好きな葉っぱをくれた。

葉っぱなんて貰っても私は何にも嬉しくない。枯れて虫に食べられてお終い。それだけ。

“いらない”と言っても無理に渡してくる。彼の大好きな桜の葉っぱを。

会う度に何度も何度もその良さを、必死に私に伝えようとしていたのを覚えている。

「それもあるけどね、それだけじゃないよ」

「じゃあ、なにがあるの?」

「それはね…」

桜の葉っぱに関する秘密を教えてくれた尋。そこで目が覚める。

起き上がって、カーテン越しの光を感じながら思う。信じられなかったよ。

口では嘘だと言っていたけどね。

でも何時しか心の底から本当に嘘だと思うようになったんだ。