いとしのくまこさん

「勝手にそういえばいい」


姫川が目を丸くする。


口にしようとしたとき、背後から伊吹くんの声がした。


「想像できるよ。姫川さんと部長の今後のことを」


わたしの隣に立ち、姫川をにらみつけている。


「うるさいわねぇ。きったないクマ抱いてなさいよぉ。クマが恋人の伊吹くん」


ぷっと姫川は吹き出し笑いをした。

わたしは全身の毛が逆立ちそうになった。


「これから滝川さんと食事なのぉ。悪気があったわけじゃないのよぉ。勘違いしないでくださいねぇ。無事にイーラーニングも稼働できたってことで、お疲れ様でぇす」


鼻歌まじりにわたしたちの横を通り過ぎ、会社を出ていった。