<ああ、彼女ね。手がけていた翻訳終わったら辞めるって言って、今はどうしてる知らないよ。人気の翻訳家だったから残念だけど> 「そうですか……。ありがとうございます」 通話を切って溜息を吐いた。 「完全に経路を断ってきたな」 当たり前といえば当たり前だけど、ここまでしたという事は、やっぱりまだこの世界にいるんだ。 「諦めてやるもんか」 口の中でつぶやき、足取りを強く帰路に就いた。