時間通りにバスが来て、老若男女が座る車内を軽く確認しては空いてる席に座る。



此処からバスに乗って心療内科は30分程。



窓から見える景色を今日は、どうしてだろう。





色とりどりの世界に見えた。




空は青くて、ズラリと並ぶ店は白い壁や淡いピンク、歩く人たちの表情もハッキリと見える。




おかしいな、急に目が良くなったとしか思えない。視力は悪くないがもっとハッキリピントがあうように見える。そして色彩もこんな鮮やかだったのかと思える。




いつも私、白黒の世界で建物も人もモザイクがかかっているかのようにボンヤリとしか見えなかったのに。




景色を見ていたら、気づけば車内は満席で小さな子供を連れた母親が手すりに捕まって子供と立っていた。




「あの……。」




考える前に口が先に動いた。




「どうぞ?」




「あ、ありがとうございます。ユイちゃん、お姉さんの席に座らせてもらって。」




女の子は私の座っていた一人用の椅子に座り、照れくさそうに私に向かって




「ありがとう……。」




と、モジモジしながらお礼を言っていた。




「どういたしまして。」




こういう行動もきっと昔は当たり前にしていたのかな。
お礼を言った女の子が可愛くて仕方なかった。