殺した理由

昼食を食べている途中、静江が話を振ってくれた。

それは、「今日、一緒にショピングに行かないかい?」という誘いだった。


利津は悩んだ。

何故なら、自分は人を一人殺めたからだ。

利津は「もしかしたら、もう警察にバレているのでは?」と言う焦りと、

「もし、静江に被害があったら・・・?」と言う焦りがあった。

暫く(しばら)悩んだ。

静江は急かすことも無く、黙って美味しそうに、食べていた。

そんな静江に申し訳なくなった。

静江は自分の事情を詳しく聞かないで、自分を引き受けてくれたこと。

服を用意してくれたこと(和服を用意してくれた)。

美味しいご飯を食べさせてくれたこと。

(自分は尽くされてる、ばっかりだ・・・)

そう考えた瞬間、利津は決心した。

行くか、行かないかで、悩むのは可笑しいが、利津にとっては、

大事な悩み事だった。

「静江、俺、一緒に行くよ」

その言葉を聞いた瞬間、静江は、とても嬉しそうな顔をしていた。

「じゃあ、着替えておくれ。」

「うん」

着替えると言っても、部屋着の和服から、外出用の和服に変わるだけだが。

まぁ、そこは深く考えては駄目なのだろう。

利津は静江に着付けをしてもらい、着替えの準備をし終えた。

し終えたら、静江は身なりを整えに、自分の部屋に行った。

やはり、あの歳でもお洒落をしたくなるものなのだな、と実感した。

酷い言い草だが。

こんなことを本人に言ったら、温厚なあの静江が鬼の形相で怒ってしまうだろう。

そんなことを思いながら、この思いは内にしまっといた。



それから、2時間後に家を出た。

随分と長い時間であったため、俺は寝ていたらしい。