殺した理由

――――――・・・。

・・・――――――。


「利津、お前は、最低な野郎だな。意味もなく、俺を殺すなんて!許さない、許さない・・・許さねぇぞ!」

もう一人だった青年が、利津を責めていた。

怒りに満ちた顔だった。

野生の獣のように、利津に牙を向けていた。

利津はそんなもう一人だった青年に酷く怯えていて、蹲(うずくま)っていた。

が、そんな利津に構わず、同じ言葉を繰り返す。

その言葉が利津を怖がらせている。


しかし、それとは一転し、

「俺は、お前に殺されても、構わないから」

もう一人だった青年は、優しい顔で笑い、哀しそうな顔で笑った。

そして、消えた。

利津はもう一人だった青年が消えると、泣いてしまった。

「はっ・・・!」

利津は一気に、上半身を起こした。

体は汗でビショビショに濡れていた。

頬には、目から流れた、涙があった。

どうやら、魘(うな)されていたらしい。


辺りを見渡せば、木で出来た柱と、畳が一面中敷き詰めれている。

他には、障子や、襖(ふすま)、掛け軸があっただけだった。

(よかった・・・静江の家だ・・・)

と、胸を撫で下ろし、安堵した。

実は利津はここに来るまで、野宿をしていた。

それで、何回もこの夢を繰る返し見ている。

怒っている、もう一人だった青年。

最後には、優しく悲しそうな笑み。

だが、そんな悪夢を見ていても、「成し遂げた」という感情しかない。

だから、こんな悪夢を見るなんて、意味がわからなかった。

「・・・喉が・・・渇いた」

利津は立ち上がると、台所に向かい、水道水の蛇口を捻り、コップに水を注いだ。

コップに入った、水を一気に飲み干す。

もう一回、注ぎ、飲み干す。

口の中が潤う。


利津はふと、外に目をやった。

朝日が昇っている。


今日が、また始まる。

利津は布団に入り、二度寝をした。