殺した理由

利津はそんなことを考えている間に眠ってしまった。

いや、気を失ったというべきだろう。

利津自身が冷静に対処が出来ずに、脳が思考を巡らせるのを強制的に止めさせ、気を失わせた。

脳がこれ以上は考えられない、耐えられない、そう判断をしたのだろう。

「これで、利津は僕のものだ・・・」

青少年は利津に聞こえもしないのに、耳元で囁いた。

静江の家の方面は、パトカーの赤い光で鮮やかに照らし出し、救急車の赤い光もそれに同調して、鮮やかに照らし出した。

野次馬も増えてきたところだろう。

ざわざわっと、何事か聞こえるが、会話までは聞こえない。

(そろそろ離れることにしようか・・・)

青少年は利津を抱きかかえながら、静江の家とは違う反対方向を向き歩き出した。

青少年は軽い足取りで地面を踏みしめた。

自分より背が高い者を抱きかかえているくせして、重たそうな素振りが一切ない。

まるで何も持っていないかのように。

すると、

青少年は突然、鼻歌を歌いだした。

それは・・・利津が歌っていたものだ。

和服屋に行く前に歌っていた。

そんな前の歌を歌ったのだ。

一切、間違えることもなく。

だが、途中までだ。

何故なら、利津が途中までしか歌わなかったからだ。

何故知っているのだろうか。

彼は利津のどこからどこまで、見ていたのだろうか?

やはり、もう一人だった青年を殺したところだろうか?

それとも、もっと前からだろうか?

彼は謎が多すぎる。

しかし、それ以上に謎を曝(さら)け出している。

そして、謎が消え、また謎が増える。

その繰り返し。

そのため無限ループ状態だ。




この青少年はどういう者なのだろう?

分かっていることは、ただ一つ。

利津を溺愛していることだけが分かっている。