殺した理由

利津は急いで走った。

地面を強く蹴り、いつもより早く。

(早く!もっと早く!!)

まだ距離はある。

だから、もっと。もっと。

(早く!!)

そんなことを思っていたはずの利津が足を急に止めた。


利津の目の前に―――17歳ぐらいの青少年。

後ろで手を組んでおり、

その青少年は意味ありげな顔で、利津の前に立っていた。

「君は誰?」

汗が流れてきた。

熱い。

利津は汗を拭(ぬぐ)った。

青少年は、「ニィ」と笑った。

「あー、やっと僕に話しかけてくれたぁ・・・。」

青少年はうっとりしたような顔をした。

利津はゾッとした。

まるで、利津をずっと見ていたかのような言い草だ。

後退る。

青少年は利津に近づく、ゆっくり。

「ねぇ、そんなに怖がんないでよ・・・。ゾクゾクしちゃうじゃないか!」

青少年は一気に利津を抱きしめた。

利津は釈然としていない様子だ。

青少年は利津の首に手を回した。

その瞬間、ぬるっとした感触を感じた。

「あ、ごめんねー。人を殺した後だったんだぁ」

「でもー・・・、君と話してたら忘れちゃってた」

青少年は恍惚(こうこつ)の笑みを利津に向けた。

青少年は利津の首に鼻を埋め、匂いを嗅いだ。

怪異な物を見るかのように、利津は青少年を見た。

(何だ、こいつ・・・)