「俺は・・・安西さんが好きです。初めて会って、それから・・・あなたのことが頭から離れられないんです。でも、今の俺だとあなたを不幸にしてしまいそうです。だから・・・この事はなかった事にしていただけませんか・・・?」


「・・・無かった事になんて・・・出来ないです。」


文子は泣きながら西澤にそう答えた。その答えに戸惑う西澤に、文子は自分の気持ちを思いっきりぶつける。


「私も・・・西澤さんが好きです!どんな西澤さんでも、私は・・・好きなんです!だから・・・無かったことになんて出来ないです!」


「でも・・・」


「もっと西澤さんの事知りたいです。だから、私を・・・西澤さんの傍でいさせてください。」


西澤の言葉を封じるように自分の気持ちをぶつける文子。そのたくさんの言葉をぶつけられ、西澤は、大きな手で文子を引っ張り、力いっぱいに抱きしめた。


「本当に・・・こんな俺・・・だけど・・・。」
「はい。」


文子の髪がほんの少しの水気を感じた。少し顔を上げると、西澤が泣きながら文子を抱きしめていた。