西澤の横にぴたっと付くように、人ごみを歩く文子。必死に、ただ必死に西澤についていく・・・そして着いた場所は、つい最近“廃校になった”小学校。文子はただならぬ不安に襲われていく。
(え・・・嫌な予感しかしない・・・どうしよう・・・この中に入って・・・)
「・・・安西さん。」
文子に向かって西澤の低い声が投げかけられる。文子はドキッとしながらも「は・・・はい。」と西澤に小さく言葉を投げ返した。
「俺は・・・ここで・・・誰も・・・信じられなくなりました。」
西澤から飛び出した言葉に、文子は驚きを隠せず、言葉を口することができなくなる。そんな文子の様子を見ながらも西澤は心の傷を抉り出していく・・・。
「俺は、ここでクラス中から・・・無視とか・・・いろいろやられてきたんです。消えろとかこっちくんなとか・・・俺といると不幸になるとか。」
文子の身体と心に西澤の過去が、次々と刺さっていく。それが、文子の中で強い痛みに変わって、苦しくなって・・・眼からどんどん涙が流れていく・・・。
「そんな中でも、友達って言える奴も居たんだ。でも、いきなり飛んでっちゃったんです。何も言わずに・・・あまりにも突然すぎてクラス中が俺のせいにして・・・耐えられなくなって・・・本の世界に逃げ込んで・・・今に至ってます。」
西澤が、今の自分になるまでの過去を話し終えた時、文子は苦しくて今にも倒れそうになっていた。必死にハンカチで泣き顔を押さえながらも・・・



