「先輩、助けてください。」


席に戻った文子に、後輩が泣きつくように小声で話してくる。


「もっと値段下げてくれって。これ以上下げたらこっちがかなり損しちゃいますよ(泣)」


そういいながら、後輩は文子にメモを渡す。その内容を見て文子は唖然とし、開いた口がふさがらなかった。

先方の言い値は、明らかに激安。これでは、明らかに文子達が大損をしてしまう。それを阻止しようと、文子の上司が孤軍奮闘していたのだ。



「せっかく・・・がんばって・・・入手したのに・・・。」



思わずつぶやいてしまった文子。それを先方は聞き逃さなかった。


「それは、わかってます。重々わかってます!お宅が現地まで行って交渉した“希少価値あり”の商品だということもわかってます。しかし、この値段では・・・うちとしては、どうしてもこの商品が欲しいんです!お願いします!」


土下座までされてしまった。文子は困って、上司の顔を見る。上司は静かに首を横に振った・・・。


この日は交渉決裂。
先方を追い返した上司は、文子の顔を見て「気にしない!」といって、文子の背中を叩いた。