「でさ・・・どうすんの?」
「何が?」

「結婚。考えてるんでしょ?」
「もちろん。でも・・・」


「文子さんを幸せに出来るのか、でしょ?」


鴨居のその言葉が、彼らの周りの空気を黒く染めていく。
確かに、西澤は文子との結婚は考えていた。しかし、部屋でただひたすら文章を書き続ける西澤には収入がなく、それに昔のトラウマも残っていた。文子には隠していたが、文子といるときも、今のように人が多く居る場所に出たときにも、そのトラウマが“にょきっ”と顔を出し、苦しめていた・・・。



「文子さんと結婚はしたい。でも・・・」



煮え切らない態度に、鴨居の中の男としての部分が登場する。



「おまえさ、もう覚悟決めろや。文子ちゃんもお前も、もう後戻りできないんだよ。」


「どういうことだよ。」

「お前と文子ちゃんは、切っても切り離せない関係になってんの!今、文子ちゃんを手放したら、お前二度と幸せになれないぞ。」


鴨居は、いらいらした気持ちを消すために煙草を取り出し、ジッポで火をつける。

そして、再び女の部分が顔を出すと・・・