「………わかった。でも、今日だけね」





携帯番号を教えるまで、合コンに行くと言うまで、




手を離してくれそうにない気迫の彼女に私は負けて携帯電話を差し出した。





「ほんと? ありがとー!」





不意打ちにハグをされ、言い返す気力も失う。





「あ、ガラケーだ。懐かしー。ルリもこれ使ってたよ」





「中学から使ってるから」





それに触れられるのは嫌だったけれど、





そんなことを言い出す隙も与えてはくれない彼女は、





慣れた手付きで私の携帯番号を自分のiPhoneに入力していった。





「そうなんだ。もう電池とか持たなくない? はい。これがルリの番号で、アドレスも入れておくね」





話しながら彼女は私の携帯電話から自分のiPhoneにメールを送り、





あっという間に番号とメールアドレスを私の携帯電話にも登録していた。





「早い………」





「えー? これくらい誰でもできるよ。はい。バイト終わったらメールして。迎えに行くから」





数少ない私の携帯電話のメモリーが、一つ増えた。