「あ、次オレ? カイトです」





カイト君は帰国子女だけど、高校から日本にいるんだって。





「リンゴです。よろしくお願いします」





耳元に響くルリの声はくすぐったいほど甘くて、説明された内容はほとんど頭に入らなかった。





「何飲む?」





最後に自己紹介したカイトが私の向かい側からメニューを差し出した。





「さすがカイト君。気が利くね」





「フツーです」





ルリの言葉に素っ気なく返すカイトがタバコに火を点けた。





「ごめん。タバコ、大丈夫だった?」





「うん。―――あ、はい。大丈夫です」






「敬語じゃないくていいよ。みんな同い年なんだから」





「はい。………あ、わかった」





「はい。よくできました」





そう言って笑う顔はまるでコドモのような人懐っこい笑顔だった。