「さ、行こっか」





いつも着ている黒い上着を着たとしても、





この服に似合わない分厚くて黒いタイツを履いていたとしても、





いつもとは違う。





別人が着ているようにしか見えない。





「………ルリすごいね。魔法使いみたい」





「魔法使い? シンデレラに出てくる?」





そう言ってルリはくしゃっとしたかわいい笑顔を見せる。





「だったら今日は素敵な王子様を見つけないとね」





時間がくれば元通り。





薄汚れた村娘には物語のように王子様は迎えになんか来ない。





何より、私が求める王子様にはもう二度会えない。





会えないんだ。





「ほら、行くよ」





デパートの化粧室から出るとルリは私を金曜日の夜の新宿に連れ出した。