そう言いかけて、





「おい! 雨森!」





カメラマンの呼ぶ声に私は身をすくめてしまう。





「はい! 今行きます!」





昔の雨森からは想像できない大きな声で返事をした雨森は、





「本の受け取りだよね?」





「………あ、うん」





と言って私が差し出した受領証にサインした。





「松井、ケータイのアドレス教えてもらってもいい?」





「―――変わってない」





「え?」





「中学の時から変わってない」





雨森は服のポケットからスマートフォンを取り出したまま、





「―――ハルキがくれたアドレスだから」





止まっていた。





「………まだ、忘れてないんだ? アイツのこと」





―――忘れてないんだ。





「………雨森は、忘れちゃったんだね―――」





―――忘れられないんだよ。





「違………!」





「―――ヒドいよ」





雨森はハルキの親友だったのに。





「松井!」





そんな雨森を見たくもなくて、





かけ出した私の背に雨森の声が強く打ち付けられた。