「中西くんに言い寄って、ホテルに誘ってたらしいよ?」

「えぇ〜。神谷さんと望月さん、親友じゃないの? 親友の彼氏を身体で奪おうとしたんだぁ。それを望月さんが休みの時を狙ってやるなんてマジ最低だね」

 ふーん。そういう事か。

 何か事実と大分違うけど、恐らくこの噂が昨日の時点で茜の耳に入ったんだ。メールでは怒ってたけど、多分ショック受けただろうな。

 更にあちこちから噂好きのバカ共の話が聞こえてくる。

「綺麗な顔して、やる事は汚いよね」

「いくら出せばやらせてくれんのかなぁ?」

 私は、ふとバカ西の席に視線を移す。

「うわっ! キモいのと目が合った」

 これはバカ西の台詞。この台詞で私の疑問は確信へと変わった。

 噂を流したのは、当本人であるバカ西と考えて、まず間違いないだろう。

 私はバカ西の席に直行した。

「えっ? こっち来たよ。やめてくれ、病気がうつる」

 そうですか。私はウイルスか何かですか。

 バカ西の目の前に来た私は、昨日と同じ場所、つまり左の頬を殴りつけた。今度はグーで。右ストレートを。

「くだらねえ事やってんじゃねえよ。お前は小学生か?」

 殴った直後、周りの女子が「キャッ!」とかいう悲鳴みてぇな声を上げてんのが、やけに耳についた。