俺はその作った笑顔に気付かないと思われているのだろうか。

だとしたら心外だな。

俺がどれだけあんたを見てたと思ってるんだ。

俺がどれだけあんたを好きだと思ってるんだ。

そんなこと言えないけど…。

「何かあったら絶対に連絡して」

彼女が車から降りて歩きだす寸前、そう言った俺に笑顔を見せてくれた。

さっきよりは少し不安の薄れたような笑顔。


俺が運ぶよ、と言ったのに聞かなかった彼女が弟さんを抱いて家に入っていくのを見届けて、会社に戻った。


なにかあったとき、彼女は俺を頼ってくれるだろうか?

今日ほんの何時間か一緒にいただけだったが、彼女は俺が今まで見てきたどの彼女とも違っていた。

彼女は頼れる人がいるんだろうか?

俺を頼ってくれる日は…くるんだろうか。