●私●


日曜日~
店近辺の駅周辺では、誰に見つかるか分からないって事で、二駅離れた駅前で待ち合わる事にした。


それも、満月ママが乗り降りしている駅とは反対方向で……


夕方6時~
脱皮した私は、ドキンドキンする胸の高鳴りを手で押さえながら、琥珀色の君を待った。


白いボディの外車が、私の前にすぅ~と来て止まった。


窓が開き、顔が見えた!


「久美ちゃん♪」


「黒田さん……」




ここは、某一流ホテル内の日本料理店。

全国の地酒が置かれている店で、私達は日本酒と天然の魚で舌鼓。


多分……きっと美味しいのよね?


でもね、でも悪いんだけど……全然味がわからないの。


あなたの顔と声と、会話と仕草と雰囲気に酔った私の全身は麻痺状態、舌は最早、完全に味覚を無くしていた。


恋に勝る食材なんか、この世にはない……と、私は知った。