●私●


私は大学卒業後、図書館に就職した訳で、それはそれは静かな世界だった。


仕事場には人間が少なく、館長と少数の職員、そしてお掃除に来ているシルバーの人達……場所が場所なだけに、必要以外の会話は殆んどなかった。


色んな人々の思想や人生観、世界情勢は、本の中から仕入れてきた、そぅ、活字が私の先生だった。


そんな場所とは丸っきり正反対の世界に、足を踏み入れた私は、毎日が一喜一憂の連続で、まるで異国に来たような気分だった。


1日24時間が凄く短くて、あぁあ~、このまま早足で年をとっていくのかなぁ?って不安になったりして……。


目の前の場面は超高速に進んでいくけど、私の内面はあまり代わり映えがない、
そんな日々に体を委ねている間に、私は1回目のお給料を受け取った。