「大丈夫ですか?
三冷さん」
「え?あ、あぁ。」
目の前には、沖田と土方、それと知らない平隊士。
あのときのままだ。
「すみません、ぶつかってしまって」
いかにもナヨナヨとした平隊士が謝る。
ぶつかったのは此方なのに向こうが謝ってくるのは、私が幹部で彼が平隊士だから。
「三冷さんぼーっとしてどうしたんですか?
土方さんに追いかけ回され過ぎて、頭イカれちゃいました?」
沖田がニヤリと微笑んだため、なんだか懐かしくなって涙が出てきそうだった。
私はいつのまにかこんなにも、幕末という時代と新撰組という人々に魅せられていたようだ。
「おめぇ、それより覚悟は出来てんだろうな?
それ返せや」
私の手にしっかりと握られた豊玉発句集に目を向けて土方が鬼となる。
「あ、これもともと沖田から預かったものなんだ。
はい、沖田返す。
私は中身を知らないが沖田はしっかり読んでたぞ?」
私は沖田の胸にそれを押し付けて逃げた。
土方はもう追ってこないようだ。
後ろから沖田の叫び声と土方の怒り狂った笑い声が飛んでくる。
戻ってこれたことによる嬉しい気持ちと、
何故こちらでは時が進んでいなかったのかという疑問が
頭のなかを何度も行ったり来たりするなかで、後ろからチクリと刺すような視線を感じた。
慌てて振り返ってみるも、土方と沖田が鬼ごっこを繰り広げているだけで、特に変わった様子はない。
首をかしげつつ、自室に戻った。
