「………お前、刀は…?」



警戒しているもののすぐに殺すつもりはないらしい。


「勿論持ってきていない。
屯所のなかなのに、なにゆえ私に刀が必要か?
部屋に置いてきたに決まっているだろう」



あくまで此方には 戦う意思がないことを表明せねば…




山崎は私が刀を下げていないことを確認すると、少しの警戒心をといたが、まだ服の襟に手を入れている。


勿論その襟の中には手裏剣かくないか、それかもっと恐ろしいものが入っていて、差し込んだ手がそれを握っていることに間違いはないのだが。






「何故ここにいる」



「邪魔はしない。見学だ。」



……そう、見学しにきたんだ。

芹沢の末路を。



「何故ここにいるかってんを聞いてるんや。
邪魔かどうかはわいが決める。」


その目は、射ぬくように私を見つめる。

ペンで描いたような整った眉がきゅっとまん中によった。



服の襟に差し込んだ手は直ぐに取り出せるようにか、力を加えていて筋がうっすら浮き出ている。

山崎の襟口からスチャという金属と金属の重なる音が聞こえて緊迫感を煽る。



「人に聞いた、と言えば頭の良い山崎なら解るだろう?
私は別に後ろめたいことなんてしていない。
当事者に直接聞いて見学しにきただけだ。
邪魔するつもりもない。」


邪魔する勇気すらない。


そんなこと出来ない…。