嘘、鬼よ。





いやぁ、沖田は案外いいやつだ。

屯所から一歩も出てない私に気を使ってのことだろう。


最初は解せなかったが、そんなこともな……――




「っておい!!」




「なんれすか?」



おいおい、口に団子詰めすぎてうまく舌が回っとらんぞ。


どんだけ食うんだよこいつは…




「みれいふぁんみれいふぁん!……ゴクンッ。
たくさんあるので食べてください。」






「いらん、それよりなんだよこの団子はっ!!」



目の前には団子山。

それを崩さぬよう器用に、ものっそいスピードで食べているのが沖田。


彼の喉には、団子がつまるということはないのだろうか?とうたがいたくなる。






「なんだこの団子は、と聞かれても…
………団子?」



量のことをいっているんだ量のことを。






軽く買い物を済ませ、さぁ帰ろうと思ったら、目の前に甘味屋があり、こんな有り様。


現代の、アンソロジーとでもいおうか、
よくあるフィクションの新撰組を題材にしたアニメや小説などの中の沖田総司も甘党だったが、事実だったのか…。





今目の前で、団子を貪っているのが、何よりの証拠…。





見ているこっちが胸焼けものだというのに…


「えー、折角刀も買って、初刀祝いにおごって差し上げようとしてるのにー。」




そう、先程の買い物で私は、刀を買った。

巡察に連れていってもらえなかった理由がこれでもあることに気付かなかった自分がバカだ。



新撰組の隊士であろうものが、刀をもっていないなど前代未聞だろう。

そんなやつが巡察に連れていってもらえるはずがない。





だが、刀をその手にもった時、あぁこれで私は人を殺めるのか、と何となく思い知った。


その刀は、以前私が握ったことのある刀よりも、少々重かったが、私にはその何十倍にも重く感じた。





以前とは、握る理由が違うのだ。

背負う重さが違うのだ。




怖い…、正直にそう思った。