紅虎に言われたことは悔しいけれど正論だもの。


 眉間に皺を寄せて、怒っていたはずの紅虎は口許にうっすら笑みを浮かべた。


 「No worrys, Hana.」


 「今、あたしのこと名前で呼んだ?」

 
 「早く行け、バーーカ!!」


 いけない、これ以上、しつこくするとキレる。


 そそくさと門を出るとブロロロロとエンジン音を立てて、郵便配達の赤いバイクがやって来た。


 「郵便です」


 近くにいたあたしに配達員が手紙の束を渡した。


 お疲れ様ですと声をかけると、小さく頷き、隣の家とバイクを走らせて行った。


 紅虎が待ってましたとばかりにすごい勢いで駆け下りて来た。


 「それ、貸せ」


 強引にあたしの手から奪い、封筒の宛名を1枚1枚確認して、何枚目かで手が止まった。


 海外からの手紙?


 「Air mail」のシールが貼ってある。


 覗き込もうとするあたしに気付き、紅虎は横を向いて手紙を隠した。


 その瞬間_____紅虎が笑っていた。


 信じられないくらい優しい笑顔で____何かの間違いだと目を擦ったら、次の瞬間にはいつものむっつりとした表情に戻っていた。


 封筒の束を片手にステップを駆け上がると、吸いかけのタバコを消して、新聞とマグカップを抱えて、家の中へと戻って行った。


 郵便が届くのを待ってたんだ。


 何も言わず、家の中に戻って行った紅虎に腹が立った。


 さっき、名前を呼んでくれて、ちょっと嬉しかったのに・・・やっぱり、アイツ、性格悪っ!


 紅虎が入って行った木の扉を思い切り睨みつけた。