噂をすれば・・・
「奈々っぽ、荷物は全部積み終わったよ~」
金次くんの明るい声が続く。
「うん、こっちも片付いた」
奈々は立ち上がると汚れた水の入ったバケツを持って、バスルームへと向かった。
鳩羽さんが知り合いから借りてきたトラックに奈々の荷物を運びきると、玄関先で奈々と鳩羽さんを見送る。
「これ、せっかくだから、奈々のカラーの食器、記念に持ってって」
サンゴちゃんが藤色の食器を入れた小さめのダンボールを奈々に渡した。
「あんたの憎まれ口が聞けないと思うと寂しいわ」とサンゴちゃんは小さなダンボールごと奈々を抱きしめた。
「やめてよ、一生の別れじゃないんだから」と返すものの、奈々はちょっと涙目になっていた。
「ね、虎ちゃん、たまに遊びに来てもいい?」
奈々の質問に紅虎は「Of course」と答えていた。
トラックに乗り込む奈々と鳩羽さんを手を振ると、
「さ、休憩しましょう。お茶を淹れるわ」とサンゴちゃんがキッチンに向かって行った。
「僕、手伝います」と草さんがサンゴちゃんの後を追う。
私はもうちょっと奈々がRoom3の部屋にいた余韻に浸りたくて、奈々の部屋に向かった。
荷物が運び出された部屋には菫色の壁だけ残った。

