「葵、そろそろ出るぞ~」
玄関から紅虎の声がして、お兄ちゃんは腰を上げた。
玄関にはサンゴちゃん、奈々、草さんがお兄ちゃんを見送りに出て来ていた。
「ごめんね、ここで見送りで」
サンゴちゃんは申し訳なさそうに言う。
平日の夜の便なので、サンゴちゃんも奈々も仕事があるのだ。
草さんも教授の個展が明日から始まるらしく、これから会場に打ち合わせに行くらしい。
「ううん、出発前にみんなと話せてよかったよ」
笑顔を見せるけど、お兄ちゃんはどこか寂しそうだ。
「葵が帰ってくる頃には私は引越しちゃった後だけど、またみんなで集まる時は誘ってよ」
奈々の言葉にもちろんと頷く。
「僕から餞別、花ちゃんに頼まれていたんだけど・・・」
ポケットから紙袋を取り出し、お兄ちゃんに手渡す。
お兄ちゃんが袋を開けると手のひらに乗るくらいのアクリル樹脂のケースが出て来た。
「i-○odケースなんだ。よかったら使って」
「ありがとう、草さん。すごくキレイだ。花もありがとう」

