後ろにいた草さんが声を掛けた。
「ちょっと、花に話があるんだけど・・・」
紅虎をあたしの間の不穏な空気を感じたのか、「じゃあ、僕、先に帰ってるから」と草さんは気を利かせて、通りを先に渡って行った。
サルビアの植えられた花壇越しに、小さくなる草さんの後ろ姿を見送っていると、
「ちょっと、公園に付き合ってくれる?」
目の前の紅虎が言った。
芝の広がる広場のベンチにあたしたちは腰を下ろした。
まだ明るいし、夏休みに入ったので、広場には小学生くらいの男の子たちが集まり、サッカーをしていた。
楽しそうにボールを追う少年たちを眺めていた。
「・・・いい加減、俺を無視するの止めろよ」
どう話を切り出すか迷っていた紅虎がようやく口を開いた。
「別に、無視してないよ」
あたしは嘘を吐いた。
白鷹さんに会った日から、あたしは紅虎を避けていた。
自分の部屋に篭りがちだったし、紅虎の車のエンジン音にいちいち反応していた。
紅虎が何かあたしに話掛けようとする素振りをしたら、わざとサンゴちゃんに話しかけてみたり、夜に扉をノックする紅虎にも寝ている振りをして、返事をしなかった。

