「だからお兄ちゃんは我慢しちゃうんだと思う。自分が我慢すれば丸く収まるって。今回も自分が諦めれば美空さんが幸せになるって思って、身を引いたんだよ」
「どう考えても女の方が悪いに決まってるじゃないか。葵は優しすぎるっていうか、バカだ。What a fool he is.」
タバコを消し、両腕を組んで、背もたれに寄りかかると、納得のいかない表情をしている。
「優しいっていうか臆病なんだよ。臆病だから自分の感情を吐き出せないの。きっと今のお兄ちゃんにとっては好きな人の幸せを遠くから祈るのが精一杯なんだと思った。さっきの話を聞いて。紅虎はいつもイエス、ノーがはっきりしてて、思い立ったらすぐに行動出来るけど、お兄ちゃんの場合は石橋を叩いて叩いて、それでも勇気を出せなくて橋を渡れないんじゃないかな?」
そう考えたら、お兄ちゃんと紅虎は正反対だな。
お互い自分に無いものを持ってるから惹かれ合って、親友になった。
紅虎はむしゃくしゃしているのか頭を掻き毟りながら言った。
「葵が良くても俺は嫌なんだよ。葵だけが苦しんでいる姿を見たくない」
「紅虎の気持ちも解るよ。あたしも悔しいもん。あたしはあたしに出来る事をするの」
「何をするっていうんだ?」
紅虎が訝しげな表情であたしを覗き込む。
「まずはお兄ちゃんを鎌倉に連れて行く。で、その後、美空さんと話してくる。お兄ちゃんの思いが一方的だったなんて思えないから」
驚いたような表情を見せた後、紅虎はにやりと笑った。
「ま、せいぜい頑張れば?気が変わった・・・俺も俺に出来る事をするから」

