「もうすぐアジサイが見頃かな?」
藍色のカーテンを少し開け、お兄ちゃんが呟いた。
街灯に照らされた雨粒が闇の中で確認出来る。
「美空さんの母方の実家が鎌倉なんだって。毎年梅雨時になると、アジサイの観光名所になるって言ってたな。アジサイは彼女の好きな花だから一緒に見に行こうって約束したのにな。その約束も、もう叶わないんだな・・・」
痛い、苦しい、会いたい。
お兄ちゃんの気持ちが手に取るように解った。
リビングを覗くと、キッチンの小窓から裏庭の電気が点いているのが見えた。
やっぱりここにいたんだ。
お兄ちゃんにおやすみを言った後、紅虎の部屋をノックしてみたけれど返事はなかった。
もしかして、ビール片手にロミにお兄ちゃんの愚痴でも言ってる?そう思って1階に降りてきた。
「また1人で飲んでるの?」
「飲む気分じゃねぇし・・・」
紅虎はタバコをふかしながら暗闇を見つめていた。
しとしとを雨が降り注ぎ、裏庭に出た途端、湿気を含んだ空気を感じる。
「サンゴちゃん特製のアイスミントティー飲む?スッとするよ」

