うんと草さんは頷いた。
オーナーと話し込む紅虎の肩を叩いて、そろそろ帰ろうと促した。
紅虎はあっさりと草さんの提案を承諾し、オーナーと奈々に挨拶をすると会計に向かった。
そうやら今日は紅虎の奢りらしい。
店を出る前に、もう一度、亮太くんの座っている席を振り返った。
亮太くんはこちらを向いていて、軽く会釈した。
隣には友達が座り、奈々と話していた。
その会釈は草さんに向けられたものだった。
「で、アイツと何話してたんだ?」
車を走らせながら紅虎が後部座席の草さんに訊ねた。
草さんはさっきからずっと窓の景色を眺めている。
「彼、僕がドラマの絵を描いたって知ってたよ。絵にゴーストを付けるって聞いた時から、僕の事を彼なりに調べたみたいだ。偶然、あのバーで居合わせて、本当にびっくりしたらしい」
「偶然ね・・・」
紅虎に向かって繰り返すと、不自然に口笛を吹き出した。
「少なくとも、今夜、話せて、少し気持ちが楽になったよ。虎、連れ出してくれてありがとう」
それきり、草さんは何も話さずまた窓の外に視線を移した。

