紅虎は亮太くんのジッポでタバコに火を点け、おいしそうに煙を吸い込んだ。
「ありがとうございました。・・・もしかして、笹森亮太さんじゃないですか?」
今気付きましたと言わんばかりにわざとらしく亮太くんの顔を覗き込む。
「わぁ、こんな所で会うなんて、ファンなんです」「握手いいですか?」いかにも嘘っぽいセリフをつらつらと発している。
「あの、あんまり騒がないで貰えますか?一応、プライベートで来てるんで」
隣に座る亮太くんの友達が紅虎に忠告した。
すみませんと明るく答えて、紅虎は声を抑えた。
「つい興奮してしまいました。今やってるドラマも見てるんですよ。笹森さん、画家の役で出てるでしょ?ドラマの中の絵も笹森さん本人が描いてるって?マジ、天才だわ~」
そう言われた亮太くんは強張った顔をしたまま、俯いた。
「テレビで見ない日はないくらい、色々出てるし、歌も歌ってるし。絵を描く時間を作るのも大変そうですよね?今度、個展を開くとか?絶対見に行きますよ」
紅虎は芸能記者みたいにぐいぐい責めていった。
亮太くんの隣に座る友達がイライラした様子でテーブルをコツコツと叩いている。
「お~、紅虎じゃないか。久しぶりだな」
カウンター脇のスタッフルームから紅虎の知り合いだというオーナーが出てきて、紅虎は挨拶をしに席を立った。
オーナーとバーカウンターの席に座り、話を始めた。

