タンポポの周りをアゲハ蝶が舞っている。
古ぼけた感じが昔の本の挿絵みたいだなって思った。
「草さん、3日前に帰ってきてたんだ。部屋隣なのに、全然解らなかったよ。忍者みたいな忍び足だな、あの人は」
「今も旅の集大成でキャンバスに向かってるわよ。3日間、寝ず、食べずで挙句の果てに倒れるまでいっちゃうんだから。すごい集中力よね」
感心したようにキッチンからサンゴちゃんの声が聞こえた。
「草さんってその時によって作品の風合いが変わるみたいで、この家に引っ越して来た頃にはこういう風に植物を押し花にして、絵とコラボレーションさせる作品を作ってた。その後、暫らくは切り絵にはまってたし、あ、僕の部屋の壁のモザイクも草さんがやってくれたんだ」
「あのキラキラしたやつ?いいなぁ~、あたしの部屋も何かしてくれないかな」
お兄ちゃんの部屋のモザイク。
濃い色から淡い色、グラデーションになった細かいガラスが壁に埋め込まれていた。
窓からの日差しに反射して、光った影が水面のようでステキだった。
まるで海の中にいるみたいだと思ったのを覚えてる。
「今度、頼んでみたら?草さんって気付くとふらっと旅に出てるけど、3ヶ月以上の長旅は今回が初めてなんじゃないかな。ここの所、半年くらいはずっとアクリル絵の具を使って描いてたみたいだから、旅先の絵もアクリル画なんだね」
テーブルに置いてあった旅行先からのハガキを発見してお兄ちゃんは手に取った。
「これも後で写真立てに入れて飾りましょ。さぁ、ご飯にしましょう。花、草くんを呼んで来て」
「了解~」
足取り軽く階段を駆け上がる。
草さんは部屋がアトリエだって言ってたけれど、この家自体が草さんの美術館みたいだ。

