「だけど、モテたい人にモテなきゃ、意味ないよね」
さっきまでとはうってかわって、君島の声は少し低かった。
「まったく。しょうがないよね、好きって気持ちは。どうしてこうも一方通行かね。両思いってやつが、僕には奇跡に思える」
そう言って、君島は自嘲気味に笑った。
意外だった。
頭脳明晰かつイケメンの言う台詞には、到底思えなかった。
辛い恋をしているのだろうか。
そんなことを思いながら君島を一瞥する。
静かに目を伏せている君島に色気を感じて、どきっとした。
憂いのある表情に、母性本能がくすぐられるような。
こんな表情、反則だ。
「奈緒ちゃん、仕事、サボりすぎだよ。ちゃんとマスター手伝っておいで」
君島はぱっといつもの表情に切りかえ、奈緒を無理矢理カウンターの中に戻した。

