春――。

桜の花びらが散り、若葉が茂り始め、木漏れ日が眩しい。

日曜の午後。

阿久津は雑貨店の中から行き交う人を眺めていた。

春の町は、日差しがやわらかいからか、それとも行き交う人たちの服の色がパステルカラーだからか、なんとなく穏やかに映る。

「ありがとうございました」

店員から品物を受け取り、店を出る。

ふと、空を見上げた。

眩しい。

世界はこんなにも光で満ち溢れていただろうか。

こんなにも、色で溢れていただろうか。