3月――。

はかま姿の奈緒たちは、卒業式を終え謝恩会に出席していた。

モデル並みにスーツをばっちり着こなしている君島准教授の周りには、一緒に写真を撮りたい学生たちで、ちょっとした人だかりができている。

一方で、もう一人、注目を浴びている人物がいた。

阿久津准教授だ。

なぜなら、トレードマークの縁なし眼鏡をかけていなかったからだ。

いつの間にコンタクトレンズに変えたのだろうと思いながら、阿久津をちらりちらりと見ていると、

「眼鏡かけている時は気づかなかったけど、阿久津先生ってまつ毛長いんだねぇ」

としみじみ言う加菜に、なぜか自分が照れくさくなった。

なにかと心配をかけていた加菜には、阿久津先生とのことを報告していたので、

「先生。なんか雰囲気が穏やかになったね」

という加菜の言葉が、素直に嬉しかった。

「うん」

学生に囲まれている阿久津を見つめる。