「どうして、酷なんですか?」

その問いに、阿久津は大きく息を吐いた。

そして、和室の仏壇を一瞥した。

阿久津は口を真一文字に結んで、うつむいている。

奈緒は、その様子を見て、阿久津の手を握り返した。

静けさの中に、時計の秒針が進む音だけが響いている。

時間が、流れている。

阿久津は静かに目を閉じた。

そして。

「由美は、俺が殺したようなものだからです」

奈緒は穏やかならぬその言葉に少し固まってしまった。

阿久津は大きなため息をつきながら、ソファの背もたれに身体を預けた。

奈緒の手を握ったまま、静かに目を閉じている。

眉間にしわを寄せ、苦しそうな表情をしている阿久津を見て、胸がずきんと痛んだ。



助けてあげたい!



そう思ったとき、マスターや君島の言葉が頭をよぎった。