それでも、愛していいですか。


「とにかく、あのマスターがそこまで言うんだ。なにか事情があるに決まってる。いいかい、奈緒ちゃん。自分の好きな人が、自分を必要としているかもしれない。それって、とても幸せなことなんだよ。話もせずに自分から遠ざかるなんて、本当に馬鹿げてる。阿久津先生に直接「君は必要ない」と言われてからでもいいじゃないか、くよくよするのは。手の届くかもしれないところに好きな人がいるんだよ?それがどれだけ幸せなことか、奈緒ちゃんは全然わかっていない!」

興奮気味に一思いに話した君島に、少し驚き固まっていると、シュンは小さく息を吐いた。

「リンちゃんはね、好きな人と音信不通になって以来、その人の行方がわからないんだよ」

「え……」

シュンは、眉を下げ君島を見つめている。

「だから、思いすら告げられない。失恋だってできていない。リンちゃんにとっては失恋できることすら、幸せなことなんだ」

「僕のことはいいよ」

そう言って君島は、残っていたソルティドッグを一気に飲み干した。

「ちゃんと恋ができる奈緒ちゃんがうらやましいから、ちゃんと恋をしてほしいから、とことん応援してしまうんだと思うよ。こう見えてこの人、ものすごくピュアだからね」

そう言ってシュンは、にっこり笑った。