「ちょ……先生」

抵抗する間もなく、顔が君島の胸に埋まる。

君島は、奈緒を優しく抱きしめ、子供にするように背中を優しくトントンした。

「言いたくなけりゃ、言わなくてもいい。だけどね。辛いときは、泣いてしまった方がいい」

背中をとんとんしながら、優しく語りかける。

温かい。

先生の体温が。

なにより、優しさが。

唇をかみしめた。

やり場のなかった気持ちが、涙になって溢れてくる。

『泣きたいときは泣けばいい。そういう我慢は必要ない』

おばあちゃんが亡くなった時、公園で阿久津先生がかけてくれた言葉が蘇ってきた。

阿久津先生。

阿久津先生。

阿久津先生!

大好き。

大好きだよ。

大好きなんだよ……。

声を上げて泣き続ける奈緒の背中を、君島はずっとさすっていた。